複雑な病的状態を筋道立てて把握し、基礎と臨床医学の両面から総合的に考察して病気を正確に診断することは、適切な治療方針を決定する出発点となり病気の予後を決定する重要な要因の一つとなります。このように病気ないし病的状態の本質を研究する学問の一つが病理学です。従って病理学は、医学の本質であるとともに日常の診療業務の基盤となっています。このことから、病理診断科は日常診療の大切な担い手であることが再認識され、平成20年に診療科の一つとして標榜されるようになりました。
現在、当院では常勤の病理専門医2名と技師5名のスタッフに加えて、4日/週の頻度で循環器病、腎臓病、血液病・リンパ腫や脳神経病等の病理を専門とする非常勤病理専門医の支援を受けて、組織診断、細胞診断、術中迅速組織診断と病理剖検の業務を遂行しています。組織診断は、本院の症例に加えて、「九州・沖縄病理診断研究センター」の業務として、九州・沖縄徳洲会グループの6施設の症例の病理組織診断の支援も行なっています。病理剖検症例は、全例臨床病理検討会(CPC)を開催して、臨床医と病理医の忌憚の無い活発な議論を行い臨床現場の真摯な検証を進めています。また、本院は日本病理学会病理専門医制度規定にもとづく認定施設として登録されています。また新たに発足する「病理専門研修プログラム」にも積極的に参加し、湘南鎌倉総合病院や九州大学などの病理学教室プログラムの関連施設として、病理専門医の育成にも貢献出来るよう具体的な行動を進める予定にしています。
本センターは、福岡徳州会病院を含めた九州・沖縄地域の徳洲会病院の病理診断を迅速かつ円滑に、そして効率良く実施するとともにその精度管理を向上させること、さらに貴重な病理診断情報を集積してdata base化することを目的に平成26年12月に発足しました。
現在、鹿児島大学と琉球大学の病理学教室のご協力のもとに、本センターが管理、運営する「九州・沖縄病理診断研究センター」の病理組織診断検体数は約15,000件/年に達しています。更に、福岡徳洲会病院と九州・沖縄地区の徳洲会病院との間の臨床並びに病理のデジタル情報ネットワークが、平成27年度に完成しましたので、平成28年度以降、順次、九州・沖縄地域の徳洲会病院15施設が取り扱う病理の組織診断体制が「電カルから電カルへ」体制へ移行する予定です。即ち、個々の患者電子カルテ上で病理診断が依頼され、数日後にその患者電子カルテに病理診断が報告されることになります。このことにより、診断の迅速化のみならず臨床医—病理医の連携の緊密化がさらに促進され、医療の質的向上に役立つことが期待されます。
「九州・沖縄病理診断研究センター」の概要は、徳洲会病理部門のホームページ に詳しく紹介していますので、是非、参照してください。
平成24年 | 平成25年 | 平成26年 | 平成27年 | 平成28年 | 平成29年 | |
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組織診断 | 7,055件 | 6,666件 | 6,859件 | 6,741件 | 5,677件 院内:4,637件 院外:1,040件 |
8,143件 院内:4,594件 院外:3,549件 |
術中迅速診断 | 104件 | 123件 | 113件 | 129件 | 79件 | 66件 |
細胞診 | 5,729件 | 5,588件 | 5,542件 | 6,234件 | 6,312件 | 6,487件 |
病理解剖 | 13例 | 12例 | 13例 | 13例 | 12例 | 10例 |
岩手医科大学医学部 昭和54年卒
日本病理学会病理専門医
日本臨床細胞学会細胞診専門医
日本臨床細胞学会細胞診指導医
死体解剖資格認定医
久留米大学 卒業
日本病理学会病理専門医