循環器内科
ほほえみ[2021 年 冬号]vol.103
<2020年 検査・治療実績>
- IVC filter(下大静脈フィルター留置術)
- 16件
- PTA(経皮的血管形成術)
- 91件
- IVUS(血管内超音波検査)
- 590件
- IABP(大動脈内バルーンパンピング術)
- 74件
- PCPS(経皮的心肺補助装置)
- 22件
- Impella(インペラ)
- 13件
- Temp PM(テンポラリーペースメーカー)
- 102件
- TAVI(経カテーテル大動脈弁留置術)
- 16件
- リード抜去
- 3件
- 心臓超音波検査
- 13,880件
- 経食道的超音波検査
- 176件
<ACS症例数>
- AMI(急性心筋梗塞)
- 136件
- UAP(不安定狭心症)
- 64件
<心臓カテーテル関係件数>
- CAG(冠動脈造影)
- 1,672件
- PTCR(経皮的冠動脈血栓溶解術)
- 12件
- PCI(経皮的冠動脈形成術)
- 539件
- Stent(ステント)
- 477件
- DCB(薬剤溶出性バルーン)
- 108件
- Rota(ロータブレーター)
- 178件
- OAS(ダイアモンド360システム)
- 21件
- ELCA(エキシマレーザー冠動脈形成術)
- 64件
- EPS 〈(心臓)電気生理学的検査〉
- 72件
- Abl(カテーテルアブレーション)
- 59件
- PM(ペースメーカー)
- 97件
- CRT or CRTD
(心室再同期療法or両室ページング機能付き植込型除細動器) - 23件
- ICD(植え込み型除細動器)
- 39件
トップレベルの件数と手技を備えるエキスパートがオールラウンドに提供する医療体制。
当院では種々の疾病を理解した治療技術と、速やかに対応できるスピードで救急医療を実践。なかでも循環器内科では、多岐に渡る循環器疾患を、高度医療とワンストップで提供できる体制を整えています。
健康寿命を3年延ばし、循環器病の死亡率減少を目指す。政府が計画決定!
65歳以上の高齢者人口は我が国総人口のうち29.1%※1を占めて過去最多。老化に関連した疾患が増加し、高齢者の受療率が高い主な傷病に入院・外来ともに循環器系疾患が上位。※2 死因も「悪性新生物(がん)」に次いで「心疾患(高血圧性を除く)」※3と非常に悩ましい状況にあります。
救急搬入した疾病※4や要介護の主な原因※5でも、心疾患が占める割合が高く※4、傷病分類別医科診療医療費のうち、循環器系の疾患は19.7%と最多です。※6
政府は「健康寿命の延伸等を図るための脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法」に規定された「循環器病対策推進基本計画」を、一昨年秋に閣議決定しました。
この基本計画で、(1)循環器病の予防や正しい知識の普及啓発(2)保健、医療および福祉にかかるサービスの提供体制の充実(3)循環器病の研究推進の3つの目標を掲げ、高齢者人口がピークを迎える2040年頃までに、「3年以上の健康寿命の延伸および循環器病の年齢調整死亡率の減少」を目指すとしています。
国民の生命や健康に重大な影響を及ぼし、社会全体に大きな影響を与える疾患とされる循環器系の病気の診療にあたる当院循環器内科の医療体制を特集します。
多岐にわたる循環器疾患に、高度な技術と体制を提供します。
循環器疾患は、食生活の乱れ、運動不足や肥満、加齢による健康状態に端を発し、その経過は生活習慣病の予備軍~発症、重症化・合併症と次第に生活機能の低下へ進行します。
しかし、いずれの段階でも、生活習慣の改善や適切な治療により予防・進行抑制が可能です。
また、自分では気付かない間に進行する病気や、先天性・遺伝性・感染性などを原因とする疾患、乳幼児期・青壮年期・高齢期と幅広い年代層に様々な病態が存在するので、ライフステージにあった対策を考えていくことも求められています。
急激に発症し、数分や数時間で生命に関わる重篤な状態に陥るため、早急に適切な治療で予後が改善されるように、我々が対応すべき循環器疾患は多岐に渡っています。
当院は昭和54年の開院以来40年以上、「救急患者を断らない」の理念のもと、二次救急病院、地域医療支援病院、災害拠点病院として地域医療に取り組んでまいりました。重症や重篤な救急患者さまを、365日年中無休で、24時間受け入れ体制を保持しています。
当院の循環器内科では、従来から積極的に取り組んできた急性心筋梗塞や心不全増悪等の急性疾患に対して、当直医1名、オンコール医師2名のほかコメディカルもオンコール体制をとって、連絡からカテーテル室搬入まで30分以内で対応する体制を確立しています。
そのほか、他院では対応困難な高度石灰化症例や重症三枝病変などへも、ロータブレータやエキシマレーザーといった特殊装置を積極的に活用し、予後の改善に努めております。
さらに、近年増加傾向にある発作性心房細動を中心とする不整脈に対するカテーテルアブレーションや、下肢閉塞性動脈硬化症に対する血管形成術も、積極的に施行しています。
参考:
※1. 総人口が減少する中で、高齢者人口が総人口に占める割合は29.1%(3640万人)で、過去最高。2021年9月15日現在 総務省人口推計資料より
※2. 2017年厚生労働省患者調査資料より
※3. 厚生労働省 令和2年(2020)人口動態統計月報年計(概数)の概況より
※4. 2018年中の救急自動車の出動件数は、急病では、脳疾患及び心疾患等を含む循環器系が全体の15.7%。特に高齢者が多く、急病搬送は死亡及び重症(長期入院)となる割合が高い。2019年版「救急・救助の現況」(総務省消防庁)
※5. 介護が必要となった主な原因は、心疾患が4.5% 2019年「国民生活基礎調査」(厚生労働省)
※6. 傷病分類別医科診療医療費30兆8,335億円のうち、循環器系の疾患は6兆782億円2017年度版「国民医療費」(厚生労働省)
循環器内科の医師にインタビューしました。
多職種で連携し治療診断を見極めワンストップで対応する循環器内科の診療体制
トップレベルの治療件数を誇る循環器内科
当院の循環器内科の医師は10名。カテーテルインターベンション治療の第一人者である下村英紀副院長の指導下、カテーテルインターベンション治療・アブレーション治療等、循環器治療の領域において、トップレベルの件数と手技を備えるエキスパートがオールラウンドに提供できる医療体制を整えている。
近年の高齢化に伴い、ペースメーカー植え込み症例が増加傾向。それに比例したペースメーカー感染症例も増加。従来、開胸術によるリード抜去にて対応せざるを得なかった領域も、2013年からエキシマレーザーを使用した経静脈的リード抜去術を開始し、現在までに30症例施行して、全例合併症なく、非常に良好な成績を収めるなど、治療技術は非常に高い。
多職種連携で優れた治療にあたるハートチーム
2014年に設備を一新した新病院では、血管造影室も増設し、緊急性の高い対応を以前にも増して可能な環境を整えた。さらに、より高度で最新の医療を提供できるよう2019年「経カテーテル大動脈弁置換術」TAVI治療の実施施設としても認証された。
「それに伴いスタッフも増員し、絶え間なく進歩する高度医療を提供できるよう日々邁進しています。優秀な人材も、機器も多い。これだけ整ったハイボリュームセンターは多くはないですね。TAVIも念願叶って実施され、手術が困難だった患者さまの治療も可能になりました」と工藤隆志センター長。
当科の特徴を聞いてみたところ、循環器内科医、心臓血管外科医、麻酔科医や看護師、リハビリ、検査技師、放射線技師、事務員で構成する「多職種連携」と言う。
「この連携体制は当院の強みといえます。個々の医師や職種で診療するのではなく、多職種で連携し様々な角度から知見を広げ、多くの選択肢の中から治療診断を見極める方が、個々の患者さまに合わせた治療を提供できます。特に内科的治療と外科的治療の両方の側面を備えるカテーテル治療において非常に有効な体制となります。」
さらに、シームレスに患者情報を共有するために「緊急性の高い局面でお互いの意思疎通を察することができるコミュニケーションが必要。」と語る。
「コミュニケーションを図るためには日ごろから風通しの良い関係性を築けるように対話も増やし、毎朝のカンファレンスでは、診療経過の報告等、チームに関わる全てのメンバーで、患者さまの病態把握を行い、どの治療段階でも治療方針を引き継ぐことを徹底しています。さらに当科の医師達は日に2回の情報共有も行っています。」と守﨑勝悟部長。
続けて「循環器疾患の全ての治療技術を施せ、あらゆる患者さまへ質の高い医療を外来・救急・入院のどの局面でもワンストップで提供できる体制を整えています。」とのこと。
お互いの医療技術を認め合い、高め合う
「当院のような救急体制では、専門分野に特化するだけでないオールマイティーさが必要。」と当院に十数年勤務する小椋裕司部長は言う。最初に診た患者さまをワンストップで治療にあたるという下村副院長の方針のためには、「救急や心臓カテーテル件数が多いということは、その数を他の医師と症例を共有し、合併症等がないように高いクオリティを標準化できるということです。多職種連携の成り立つ当院のような中核病院では、どのように困った状況でも、患者さまはもちろん、ご家族の方にも安心して治療を受けていただけることが、そして、心臓カテーテルや造影CTなど紹介してくださる地域の先生方の期待を超える対応ができることが、我々の役目だと思っています。」
確かにこのインタビューで当院の特徴を尋ねると、医師全員がチーム連携とワンストップで診療にあたる体制を語る。
「専門分野だからこの先生ということではなく、得意とする専門ベースの上で更にどのような病気でも治療にあたれる知識と技術を兼ね備えている。特に心臓カテーテル室が以前と比べて増えた今は尚更のこと。そのために学会等にも積極的に参加し向上心を持っている」と14年前にも当院で勤務し、この春よりまた当院で診療にあたる三浦光年部長は言う。
ワンストップ体制ではお互いの医療技術を認め合い、チーム連携では頼り合える立場の信頼関係が構築できている。
医療の場でも多様性が求められる現代
「他院では、解決しがたい慢性完全閉塞なども対応できる。心臓血管外科を併設し、これだけ多くのスタッフを備えている病院は他に多くありません。県内でも恵まれた環境の病院といえます。そのため離島では難しい治療の紹介なども連携をとっています」と、上野聡史医長。
習熟した医師しか施せない技術を要する「ロータブレータ」と呼ばれる冠動脈の狭窄病変を削る手技。こなせる女医は他にはいない、と医師達に定評のある松室友梨医長は、「研修医の時から10年当院で勤務し、「長く受診している患者さまとも信頼関係を築いています。最新の医療技術を学ぶこともしっかり行っています。」現代社会同様、多様性が尊重される医療の現場でも、女医としての能力をいかんなく発揮している。
多様性といえば、当院は、女性医師の働き方もワークライフバランスを重視している。育休中の西川直美医長から「十数年当院で勤務し、今回妊娠したことをきっかけに妊娠中は外来を中心に診療していました。当院は近隣の先生方からの紹介も多く頂いており、長い間診療させて頂いている患者さまももちろんですが、一人一人のニーズに応えられるよう心がけていました。」とコメントをいただいた。
「当院は症例も多く、さらなる技術の向上に日々努めることができる。今までに救命できた経験を元に、高齢の患者さま方のニーズに応え、データに基づいた治療を行っていきたい。」と山村智医長。
「検査と臨床をリンクさせた診療を、エコーの臨床活用ができる病院の望ましい姿を実務に活かしている」と語るのは芝翔医師。どのような所見をとれば良いか読影できる心臓エコーの専門医は、国内でも僅かな存在で当科のキーパーソンといえる。
医師‐看護師の良好なコミュニケーション
日頃サポートしてくれている看護師達も取り上げて欲しい」と医師より声があがった。
11名いる血管造影室看護師は、午前中はリリーフナースとして病棟・循環器外来業務を担い、午後は血管造影室で検査治療の介助、夜間帯のオンコール体制や救急外来病棟で勤務するなど多様な働き方を行っている。
更に急性心筋梗塞や、慢性心不全の患者さまに対して継続看護を目的として循環器看護外来を開始した。
「チーム医療は、患者さまを中心として、ひとり一人が役割を担っている。看護師はその中でも患者さまに一番近い存在であり、コメディカル間の調整役として柔軟に対応している。チーム医療に必要なコミュニケーションを大切に、医師・患者さまからもスタッフが信頼される看護、心に届く看護ができる環境作りを継続したい。」と松尾弓看護師長。
このように精鋭が揃った当院の循環器内科では、高齢化社会で、循環器疾患に対する治療が当院で完結することをめざし、日々研鑽して、今後も地域医療に貢献していきたいと考えている。