特徴・特色
緩和ケアはWHOにより「生命を脅かす病に関連する問題に直面している患者様とその家族のQOLを、痛みやその他の身体的・心理社会的・スピリチュアルな問題を早期に見出し的確に評価を行い対応することで、 苦痛を予防し和らげることを通して向上させるアプローチである」と定義されています。当院での緩和ケアもWHOの定義を理念とし、対象の患者様やそのご家族の治療、相談、自宅退院や緩和病棟への転院に向けた情報を提供しています。以前の緩和ケアは、治療による回復が望めなくなった終末期のがん患者様が対象となることが多くみられましたが、最近では身体的苦痛に対応するだけでなく、がん告知や治療開始の時点でのインフォームド・コンセントや心理的・精神的な苦痛を取り除くためのカウンセリングやスピリチュアルな支援、就労や自宅での介護等の社会的問題にも積極的に対処する包括的アプローチでのケアに変遷しています。
我々は医師、看護師、薬剤師、臨床心理士、管理栄養士、理学療法士、作業療法士、医療ソーシャルワーカーからなるチームを形成しています。一昨年度より対象を非がんである心不全などの慢性疾患にも広げたことにより、呼称を「症状緩和チーム」と変更致しました。
症状緩和チームのメンバー
- 身体担当 廣田 一紀医師
- 精神担当 山下 真医師
- 薬剤師
- 臨床心理士
- 看護師(緩和ケア専従)
- 公認心理師
- 管理栄養士
- 医療ソーシャルワーカー
- 理学療法士
- 作業療法士
チームの活動
本年度の症状緩和チームの活動内容は、毎週水曜日にカンファレンスおよびチーム回診を行っており、チーム回診以外は患者様の状態に応じて個別介入を行っています。カンファレンスでは介入依頼のある症例を中心に、チーム全体でディスカッションしていますが、未介入の症例についても早期介入が必要であればカンファレンスの対象とし、チーム全員で問題解決に対する意見を出し合っています。

我々が担当する疾患は、ほとんどが各種進行がんの患者様ですが、末期の心不全や肝硬変など、がん以外の患者様へのサポートも増えてきております。回診についても、多人数が心理的負担になる場合もありますので、患者様のご希望に添いながらアプローチを行なっています。
ここ数年ではAYA世代の方や、今後の治療や療養に関することを一緒に考えさせていただく機会も多くなりました。患者様やご家族が希望されている生活に少しでも近づけるよう、アドバンス・ケア・プランニング(Advance Care Planning(ACP))の概念を大切に、かかわらせていただいています。
※アドバンス・ケア・プランニングとは、患者・家族・医療従事者の話し合いを通じて、患者の価値観を明らかにし、これからの治療・ケアの目標や選好を明確にするプロセスのことを指します。
症状緩和フォーラム
教育面では、院内勉強会「症状緩和フォーラム」を月2回のペースで行っています。コロナ禍での開催なので、当院の講堂で人数制限を設けたうえでWeb開催も加え、ハイブリッドで行っています。ここ数回は徳洲会グループなど関連施設への拡充も徐々に行っています。
第1回 福岡徳洲会病院 症状緩和フォーラム2020/10/19 17:30-18:30福岡徳洲会病院講堂(ハイブリッド開催)
- 緩和ケアについて 緩和ケア 廣田 一紀
- 当院の緩和ケア 認定看護師 田口 直美
第2回 福岡徳洲会病院 症状緩和フォーラム2020/12/21 17:30-18:30福岡徳洲会病院講堂(ハイブリッド開催)
- 鎮痛薬の特徴について(初級編) 薬剤師 村田 智弘
- がん性疼痛に対する神経ブロック 緩和ケア 廣田 一紀
第3回 福岡徳洲会病院 症状緩和フォーラム2021/02/15 17:30-18:30福岡徳洲会病院講堂(ハイブリッド開催)
- 終末期せん妄について 緩和ケア 廣田 一紀
- 症状緩和チームについて 認定看護師 内山 睦子
第4回 症状緩和フォーラム 2021年4月21日 水曜日
- がん患者への栄養管理の実際 管理栄養士 吉富 周子
- がん患者とその家族への心のケア 臨床心理士 三坂 奈津子
第5回 症状緩和フォーラム 2021年6月16日 水曜日
- 鎮痛剤:オピオイドについて オピオイドに関する基礎知識 薬剤部 後藤 美緒
- がんリハビリテーション摂食嚥下について リハビリテーション科ST 山崎 ひとみ
- がんリハビリテーション 呼吸器リハ リハビリテーション科 PT 江上 篤史
第6回 症状緩和フォーラム 2021年8月18日 水曜日
- ここまで進化した放射線治療~当院での取り組み~ 放射線技師 松永 裕幹
- 放射線治療 緩和照射を中心に 放射線科 森岡 丈明
第7回 症状緩和フォーラム 2021年10月20日 水曜日
- AYA世代の精神的支援家族ケア 臨床心理士 荻原 莉穂
- がんリハビリテーション~骨転移の患者様への動き~ リハビリテーション科 PT 江上 篤史
第8回 症状緩和フォーラム 2021年12月15日 水曜日
- 終末期のせん妄 緩和ケア 廣田 一紀
第9回 症状緩和フォーラム 2022年2月16日 水曜日
- 安心できる療養にむけて MSW 植松 千晴
- 緩和領域における ステロイドの使用方法 薬剤部 村田 智弘
第10回 症状緩和フォーラム 2022年4月20日 水曜日
- 緩和ケア 症状緩和チーム 廣田 一紀
- 症状緩和チームについて 緩和ケア認定看護師 内山 睦子
第11回 症状緩和フォーラム 2022年6月15日 水曜日
- がん性疼痛の治療 症状緩和チーム 廣田 一紀
第12回 症状緩和フォーラム 2022年8月17日 水曜日
- 抗がん剤治療中の食事について 管理栄養士 吉富 周子
- 口腔ケアについて 摂食・嚥下認定看護師 赤城 さゆり
第13回症状緩和フォーラム 2022年10月19日 水曜日
- 突出痛について 薬剤部 村田 智弘
- リンパ浮腫とリハビリテーション 理学療法士 江上 篤史
第14回症状緩和フォーラム 2022年12月21日 水曜日
- 緩和ケアにおける精神症状とその対応 心療内科部長 山下 真
- がん患者の在宅療養について MSW 今泉 彰太
緩和ケア研修会
緩和ケア研修会とは正式名称を「がん等の診療に携わる医師等に対する緩和ケア研修会」といい、がん等の診療に携わる全ての医師・歯科医師、またこれらの医師・歯科医師と協働し、緩和ケアに従事するその他の医療従事者を対象としています。すべての医療従事者が基本的な緩和ケアを学ぶ機会を提供し、緩和ケアを必要とするすべての人に緩和ケアが届けられる社会の実現を目指し、厚生労働省より日本緩和医療学会が委託を受け、実施している事業です。
当院でも2023年より集合研修を開催し、がん治療の質の向上を図っています。
症状緩和チーム介入依頼内容・転帰
2022年1月~2022年12月、合計 127件
【依頼内容 (1患者につき複数該当あり)】
- 身体症状 122件
- 精神的ケア 50件
- 意思決定支援 26件
- 家族ケア・支援 34件
【転帰(123名)】
- 当院での看取り:31名
- 緩和ケア病棟等への転院:26名
- 自宅退院:68名
※その他の患者様は当院にてフォロー中
痛みの専門的治療
当院では、鎮痛剤で痛みがとれない患者様や、鎮痛剤が副作用で飲めない等の患者様に対して、ペインクリニックの専門医が神経ブロック療法を行っています。
顔面の痛みには三叉神経ブロック、内臓の痛みには内臓神経ブロックを、骨の痛みや手足の神経の痛みには、高周波熱凝固法やパルス高周波法などのブロック治療を行っています。

外来でのエコーガイド下神経ブロック

血管造影室にて悪性疾患に対する透視下神経ブロック
医療施設の皆様へ
がんの痛みの調整で難渋している患者様がいらっしゃいましたら、神経ブロック療法で痛みが軽減する可能性があるかも知れませんので、ご紹介よろしくお願い致します。外来診察は「緩和ケア」外来で行っております。
連携可能な近隣の医療機関:九州大学病院、九州がんセンター、福岡大学病院、久留米大学病院、佐賀大学病院、福岡大学筑紫病院、栄光病院、秋本病院、友田病院、原土井病院、たたらリハビリテーション病院、聖マリア病院、九州医療センター、浜の町病院、福岡済生会病院、福岡日赤病院、九州中央病院、仲原病院、福西会病院、福岡リハビリテーション病院などその他多数

「緩和ケア医のとある水曜日(広報誌ほほえみ Vol.96」はこちらからご覧ください。
外来予定表
※休診については、トップページの休診のお知らせをご参照ください。