特徴・特色
地域の第一線病院の脳神経外科として、30年以上にわたって手術・診療にあたっている。救急病院という特質上、クモ膜下出血・脳梗塞などの脳血管障害(脳卒中)が手術症例全体の40%を占めています。その他、頭頚部外傷・腫瘍・脊椎脊髄疾患など、脳神経外科疾患全般にわたる手術・診療を行っています。
脳卒中治療の中でも、脳動脈瘤手術は最も中心的な位置を占めます。当科では、開頭手術(クリッピング術)・脳血管内手術(コイル塞栓術)いずれの治療も可能です。クモ膜下出血(破裂脳動脈瘤)に対しては、原則として急性期手術を行い、予後を不良とする遅発性脳血管攣縮に対しても、薬物治療と適切な術後管理で良好な治療成績をあげています。未破裂脳動脈瘤に対しても、手術適応などを十分に検討した上で最適な治療法を提案し、治療を行っています。
脳梗塞に対する治療も、当科の特色のひとつである。発症直後の超急性期治療に関しては、脳神経外科医の当直体制と救急総合診療部との連携によって、24時間体制での血栓溶解療法(t-PA静注療法)や血栓除去療法に対応しており、2021年は経皮的血栓回収術を22例施行した。さらに、頚動脈狭窄症に対する脳梗塞予防治療として、頚動脈内膜剥離術(CEA)や頚動脈ステント留置術(CAS)を積極的に行っており、血管内治療によるCASは16例となっています。
また、脊椎脊髄疾患にも対応しており、当科がメインで行っています。脊椎脊髄疾患は変性疾患、外傷、腫瘍、血管障害など多岐にわたり、神経所見は単純なものより複雑になることが多いため脊椎脊髄疾患を疑ったり考えたりする場合は専門医の相談が必要で、またMRIなど画像評価が必須となっています。また、当院脳・脊髄センターでは脊髄外来を開設しています。脳疾患はもとより脊椎脊髄疾患の疑いがあればぜひご相談してください。
脊椎脊髄疾患について
脊椎脊髄疾患の種類
- 頭蓋頚椎移行部,脊椎変性疾患(後縦靭帯骨化症,黄色靭帯骨化症,椎間板ヘルニア,脊柱管狭窄症,変性すべり症など)
- 脊髄,脊椎外傷,圧迫骨折
- 脊髄・脊椎腫瘍
- 脊髄血管障害(脊髄動静脈奇形,脊髄出血など)
- 脊髄空洞症,その他(特殊な疾患など)
現在、力を入れて診察を開始したものとして「椎間板ヘルニア」、「脊椎圧迫骨折」があります。
椎間板ヘルニア
治療の原則は安静、腰椎コルセットの装着、腰椎けん引、マッサージなどの理学的療法が主体で80~85%は自然軽快するといわれています。症状が強いときは筋弛緩剤、消炎鎮痛剤、ビタミン剤などの内服薬治療や腰部硬膜外神経ブロックなどを行います。以上の保存的治療を2~3カ月行っても効果がない場合、痛みの発作を繰り返す場合、痛みが激烈な場合、下肢運動麻痺や排尿障害などの神経症状を呈するものは治療の対象となります。
手術療法
完全内視鏡下脊椎手術
(Full-endoscopic Spinal Surgery:FESS・フェス)
外径約7mmの内視鏡を用いた低侵襲な手術の総称です。手術の際の創部の小ささ、術後疼痛の軽減のみならず入院日数の短縮(2泊3日程度)が可能となっています。その中に腰椎椎間板ヘルニアの治療方法である経皮的内視鏡下腰椎椎間板ヘルニア摘出術(Percutaneous Endoscopic Lumbar Discectomy: PELD・ぺルド)が含まれています。
化学的髄核融解術 (椎間板内酵素注入療法)
局所麻酔で行います。ヘルニアができている椎間板内に針を刺し、酵素を含んだ薬剤(ヘルニコア・コンドリアーゼ)を注入します。注入した薬剤で飛び出した髄核を小さくしてヘルニアによる神経への圧迫を軽減させる治療法です。椎間板の位置にもよりますが約30分で終了します。1泊2日の入院で治療費は約60,000円(3割負担)です。
脊椎圧迫骨折
脊椎圧迫骨折は椎体がつぶれて扁平化になったものです。高齢者、骨粗鬆症に随伴し、好発部位は胸腰椎移行部(第12胸椎-第1腰椎)です。
診断方法:X線検査やCT検査を行い、MRIでの診断率は90%以上です。
治療方法:基本は保存的加療です。受傷後1ヵ月は硬性コルセットを使用し固定します。しかし、偽関節化(保存的加療を継続しても骨癒合が期待できない状態)や遷延治癒(骨化が遅れている状態)が20~30%発生します。当院ではそのような方に対して低侵襲(体への負担が少ない)な手術療法を行っております。
手術療法
経皮的椎体形成術
BKP(Balloon Kyphoplasty・バルーンカイフォプラスティー)
手術は全身麻酔で行います。椎体の中にバルーン(風船)を挿入し膨らませて、つぶれた椎体の形を戻し空洞を作成します。バルーンをしぼませて取り出し骨セメントを詰め込みます。低侵襲で疼痛緩和の効果が証明されています。翌日から歩行が可能です。
- 適応
- 原発性骨粗鬆症による1椎体の急性期圧迫骨折。十分な保存加療でも疼痛の緩和がない
- 多発性骨髄腫または転移性骨腫瘍による3椎体までの有痛性脊椎圧迫骨折
骨粗鬆症性骨折体ステント留置術
VBS(Vertebral Body Stenting・バーテブラル ボディ ステンティング)
手術は全身麻酔で行います。椎体内にバルーンカテーテルにマウントされた椎体用ステントを挿入し整復位を保持しつつ骨セメントを詰め込みます。BKPでは骨セメントを詰め込むまでの間に復元した椎体高の矯正損失が生じることがありますがそれを予防できます。また、著明な腰背部痛の軽減効果が期待できます。(椎体高圧潰率(前縁部/後縁部)66%に矯正、1年後も維持)
脳・脊髄センター外来
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脳卒中診療科 脳神経外科 | 藤井(清) 吉田(英) 松尾(諭) | 吉田(英) 長谷川 藤井(清) | 原(健太) 横溝 | 長谷川 横溝 | 藤井(清) 原(健太) 松尾(諭) | 担当医のみ(初診のみ) |
脊髄外来 | 隈元 津田 | 吉田(英) 隈元 津田 | 担当医 | 吉田(英) 津田 | 担当医 | 吉田英 (紹介のみ) 津田 |
※休診、診療時間などは外来予定一覧をご確認ください。
医療設備
CT、MRI(1.5T:2台 3.0T:1台)、DSA血管撮影装置、SPECT、高気圧酸素治療装置